A: こんにちは。チーフ・メディカル・オフィサーの松田和子です。
様々な原因による脂肪肝・肝臓ダメージをカバーする特許が認められた“今”となっては、NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)によるものだけを対象とする最初の特許はある意味、重複しているとも言えます。特許戦略というのは、なかなか難しいもので、米国特許商標庁の審議官に根拠となるデータを示しながら、クレーム(特許請求)したい項目について論理的に説明した膨大な資料を提出する必要があります。企業にとっては、広く、詳細にわたってカバーできればそれに越したことがないわけですが、限られたデータで欲張って沢山クレームすると却下(拒絶)されてしまいます。
私達は、最初にNASHのマウスモデルでの良好な結果を受けて、欲張らずにNAFLD、NASHの治療対象で特許を申請しました。それが8月の特許承認に結びつきました。その後、進行型NASHのマウスモデルでも良好な結果が得られた上に、過去の臨床治験データの解析から、脂肪肝に強く関わる血液検査結果にとても良い数値が出ていることが判明したので、それらを包括的にまとめたデータ・資料を作成し改めて申請したものが、今回の広く他の原因による脂肪肝や肝臓ダメージを対象とする特許に繋がりました。
この特許が今のタイミングで出たことは大変喜ばしいことでした。というのはAASLD Liver Meeting (前回のこのコーナーで説明したアメリカでの学会)で、かなりの数の基礎研究者や臨床医の先生達に「MN-001はきっとNASH以外の肝疾患にも効くはずだ、一緒に仕事が出来ませんか? MN-001を分けてもらえませんか?」と声を掛けられました。私達もNASH以外の可能性はもちろん考えていましたので、将来他の肝臓疾患にも適応を広げて開発を進める可能性のためにも、特許を抑えておくことが、我々のような創薬ベンチャーにとっては要(命)になります。
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