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(最高経営責任者)
岡島正恒
東京事務所代表、副社長
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アメリカ神経学会総会@トロント ~2~

2010/05/31

前回のブログで~数年前に定説だった事が正しいとは限らない~と書きましたが、何もこれは医学の分野に限ったことでは無いと思います。でも人の病気や健康に関る分野で今まで正しいと思われていた事が違う認識で捕らえられ、それにより診断法や治療方法に変化が生じるのであれば、患者さんの診断・治療に関る専門家は常に新しい知見にオープンに耳を傾け、必要な事を取り入れていくことが大切です。

今回のアメリカ神経学会総会では限られた時間に中で、多発性硬化症の治験についてのセッションを中心にポスターや口頭発表を回りましたが、特に印象に残る発表が2つありました。

1つはS11.001 ”Optimal Design and Analysis of Phase I/II Clinical Trials in MS with Gadolinium Enhancing Lesion as the Endpoint” という題目です。この研究で検証しようとした事を間単に説明すると、多発性硬化症治療の治験においてエンドポイントとして頻繁に用いられてきたGd強調画像について、今までの撮影頻度、およびそのデータ解析手法が果たして正しかったのか?最も望ましい撮影頻度や解析方法は本当はどれなのか?という事を問いかけるものでした。Gd強調画像の撮影頻度は2週間毎が良いのか、1ヶ月毎あるいは2ヶ月毎でもよいのか?そしてデータの解析に用いる手法は何が一番適しているのか?を改めて検証した研究発表でした。この発表を聞きながら、思い出したのがその2日前にお会いしたDr. Foxとの会話です。急性所見は平均3週間ほどで画像上での診断が難しくなるので、2週間毎の撮影でなければ差を明確に示せないというのです。KOL(キー・オピニオンリーダー)との会合でも同じ事を言われました。これからは、エンドポイントの設定やスタディデザインも変わってくるのだろうと推測されます。

今までの多発性硬化症の治療薬の治験でプライマリー・エンドポイントとしては選ばれる事のなかったBrain Volume(脳体積=脳萎縮の程度を検証する)についても、2009年にMultiple Sclerosis という雑誌に発表された論文 “Proof of concept studies for tissue-protective agents in multiple sclerosis” (2009;15; p 542-546) では神経保護作用を持つ薬の治験において最も望ましいプライマリー・エンドポイントとしてKOL達が選んだものはBrain Volumeだと明記されています。

もう一つアメリカ神経学会総会で興味深かったセッションはS11.002 ”Twice Weekly vs Daily Glatiramer Acetate: Result of a Randomized, Rater-Blinded Prospective Clinical Trial Clinical and MRI Study in RRMS” です。多発性硬化症治療薬のコパキサンは毎日行なう皮下注射治療なのですが、この少人数のパイロットスタディでは、週2回の皮下注射でも毎日の皮下注射治療と同じ効果があるというものでした。もし大人数のスタディでも同じ効果があると認められれば、週に2回注射に減らせる可能性があるのですから患者さんにとっても朗報ですし、更に医療費の削減にも繋がりますね。

松田和子

「MediciNova IR club」新設

2010/05/14

皆さん、こんにちは。東京事務所岡島です。

昨日、当社ホームページに「MediciNova IR club」のコーナーを新設しました。

ご覧いただけましたでしょうか?

今までも動画で当社の経営陣、開発者からのメッセージを伝えたいとの構想があったのですがコストを考えて見送ってきた経緯があります。今回はいくらとは言いませんが、破格の値段で制作いただきました。ご協力いただきました方々にこの場を借りて御礼申し上げたいと思います。

これまで説明会で皆様の前でお話しさせていただいたのは岩城、松田、岡島の3名ですが、本社が米国サンディエゴの外国企業ということもあり、社員の顔が見えにくいという指摘をいただいておりました。

この撮影は主として3月に行われた取締役会の際に行ったもので、社外取締役のメンバーのコメントも撮ることができました。このIR clubの動画を通じて少しでも当社のメンバーを知っていただけるのは幸いです。

また、大手製薬会社を長年勤め上げた日本法人のアドバイザーをお願いしている蔭山氏のインタビューは日本の製薬企業が抱えている問題点そしてそこから繋がる当社の存在意義について客観的な理解が深まるものと考えております。

コンテンツはそれぞれ数分の単位に分け、見易くしておりますので、「百聞は一見にしかず」是非一度ご覧になってみて下さい。

岡島正恒

アメリカ神経学会総会@トロント ~1~

2010/05/07

久々にサンディエゴのオフィスに来ています。3月末の東京出張からアメリカに戻った後あちこち出張続きでした。トロントでの学会の後もサンディエゴオフィスに居たのは2日間。すぐに出張で、昨日ようやく自宅に戻りました。何だか時間が経ってしまいましたが、今回のブログではトロントでのアメリカ神経学会の報告をしたいと思います。

今回の学会はCSO (チーフ・サイエンス・オフィサー)のカーク・ジョンソンと事業開発のシニアコンサルタントのマイケル・コフィーと私の3人で参加しました。初日のメインイベントは、あのDr. Foxとのミーティングでした。Neurology誌のエディトリアルコメントを書く位ですから、貫禄のある年配のドクターかと想像していたのですが 実際はずっと若いドクターでビックリ。神経科ドクターは物静かで思慮深い感じの落ち着いた人が多いという印象を持っていたのですが、Dr. Foxはとてもエネルギッシュで快活な方でした。彼はミーティングの間中、多発性硬化症の治療、新薬の治験、患者さんの治療に対する効果対リスク評価の解析など自分の研究テーマについて、そしてMN-166への期待を熱っぽく語ってくれました。特にMN-166の今後の開発プラン、例えば治験デザイン、コンビネーションセラピーの方法、エンドポイントなどに対する非常に具体的なアドバイスを下さいました。また、治験に強く興味を持つ他の機関との橋渡し等、 最後は「どんな協力も惜しまないので僕に出来ることがあればいつでも連絡して下さい」と。

臨床医として働いていた頃は、学会というと口頭/ポスター発表や教育セッションやセミナーに出席して知識をアップデートするというものでした。しかし、製薬会社に勤める現在は、学会とはそれだけでは無いのです。こういう学会はその業界の人々一同が会するgood opportunityです。お互いに効率よくミーティングをセットアップ出来る事は、こんな良い機会はそうそうありません!という訳で、翌日からブレクファスト・ミーティングからディナー・ミーティングまで連日スケジュールがびっしりと詰まっています。ある1日は学会場すぐ横のホテルのカフェに14回違う相手と行きました。最後は手持ちの名刺が尽きてしまいました。

ビジネストークだけでなく、多発性硬化症の専門家とのミーティングも大事です。MN-166のフェーズ2治験で化学諮問委員会(SAB)を努めた3名のドクターに新たに国立衛生研究所(NIH)の神経専門家を加えたKey opinion leader KOL達との会合もありました。KOL達も我々やDr. Foxと同じ意見であることを再確認。また、KOLと会談して、改めて多発性硬化症という病気の複雑さ、原因/診断/治療全ての面においてのダイナミックさというものを感じ入りました。数年前に定説だった事が正しいとは限らない、、という意味では、大御所と言われる人たちも常にオープンマインドで知識をブラッシュアップしていなければいけないという事です。

以下 次回に続く、、、、、、   

松田和子