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薬物依存症のフェーズ2治験

2012/09/05

今日の午後(日本時間では9月5日午前)に出されたプレスリリースでも発表されましたが、UCLA ( University of California Los Angeles)との共同治験を行っている、MN-166 (イブジラスト)のフェーズ2治験に対して、NIH(National Institute of Health米国国立衛生研究所)の傘下にある NIDA ( National Institute of Drug Abuse米国国立薬物乱用研究所)からの大きな研究費が承認されました。この新たなフェーズ2治験は Methamphetamine(いわゆる覚醒剤)中毒の患者さんを対象に行われる臨床試験です。

薬物依存症という病気は、個々の患者さんやその家族だけでなく、社会的に大きなインパクトのある病気と考えられます。医療費が高い米国では、国単位で見た医療費全体への影響も大きなものです。また、覚醒剤、大麻などの違法ドラッグ依存症においては、お薬を購入することが、国際的な犯罪組織の資金源になってることも考えなくてはいけません。

薬物への精神的・身体的な依存にはミクログリア細胞(なかでもアストロサイト)の活性化が関与すると考えられ、そのミクログリアを抑制する働きがMN-166にあると考えられています。この依存のメカニズムは日本での研究も盛んなのです。

最近でも俳優のシルベスター・スタローンさんの息子が薬物過剰摂取のために事故死されました。(薬物の詳細は不明)他にも、世界的歌手であったホィットニー・ヒューストンさんや数年前では世界的エンターティナーであったマイケル・ジャクソンさんが薬物過剰摂取で命を落としました。日本でも数年前に、立て続けに元アイドル歌手、人気俳優(だった)の違法薬物使用やそれに関連する事故が世間を騒がせましたね。

薬物依存症というのは、世間体があるので患者さんがその病気自体を自認する事が難しく、そのため、かなり重症になるまで治療を開始しない特徴があります。通院治療ではなかなか難しく、入院治療を提供するリハビリ施設がロサンゼルス近郊に結構あるようです。ハリウッド・スターのようなリッチな患者さんが利用する施設はリゾートホテルのようにゴージャスだそうです。しかし、残念ながらどこも行動心理療法が中心で、施設に滞在中は止められても、退院後に再発することが多く何度もリハビリ治療を繰り返すのが常です。日本の場合は薬物依存症の治療を行なう施設があっても、そのことを公にしているところはあまり多くないのではないでしょうか?

実は、薬物依存、特に覚醒剤依存症の患者さんが日本に大変多いことは、専門家の間では良く知られています。このような疾患は患者数の実態を把握すること自体が難しいので、厚生労働省などが把握している以上に潜在患者さんが沢山いるだろう…ということは容易に察しが付きますが、世界的にも日本の覚醒剤汚染は有名(?)なのです。以前NIDAの会議に参加した時に、「日本は覚醒剤汚染で有名な国だから、当然イブジラストは(オフレーベルで)治療に使われているでしょう?何か、資料やデータはありませんか?」と聞かれた事がありました。

残念ながら、薬物依存治療薬に積極的に取り組む製薬会社はあまり無いようです。大手製薬会社はどうしても、治験が行ない易いか? 利益に結びつきやすいか?ということを優先的に考慮するのでしょうか。このように社会的に必要な治療薬の開発のために米国の国立研究機関が研究費を出して臨床試験をサポートするのは凄い事だと思います。

 話は変わりますが、先週金・土曜と日経主催のIRフェアにメディシノバも参加し、金曜日にはプレゼンテーションもさせていただきました。おかげさまで、会場はほぼ満席。沢山の方とお話出来、会場にいらしてくれた株主の方とも個々にゆっくりご説明する時間もありとても有意義な2日間でした。金曜は蒸し暑く、土曜日は雨 という天気にも関わらず東京ビッグサイトまで足を運んで下さった皆様に あらためてお礼を申し上げます。

 

松田 記