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近況報告

2011/04/24

しばらくブログの更新に間が開いてしまいました。ごめんなさい。

仕事の方は相変わらずで、あちこちアメリカ国内だけでなく海外出張など忙しいスケジュールでブログに書きたかった事は色々沢山あるのですが、日本が大震災の影響でまだまだ大変な状況なのに、淡々と仕事の話をするのは如何なものか、、、という気がしてブログを書く事に気が進まなかったのです。

でも、このブログはアメリカでの会社の様子をタイムリーに伝えられる唯一の手段ですから、気を取り直し最近のこちらの様子をお伝えしようと思います。前回のブログ以来3月の中旬から4月にかけては色々な大きなイベントがありました。

一番の大きなイベントとしては、MN-221-007の治験のmid-term investigator meeting(中間期 007治験ミーティング)がありました。007治験に関わるドクターやスタディ・コーディネーターや治験モニターなど治験に関わる人達が一同に会して色々な情報を交換し合ったり、今後の治験をスムーズに行うためのアイディアを出し合ったり、GCP(good clinical practice)のレクチャーなどを行いました。通常、臨床治験の開始時には、“キック・オフ ミーティング”といって治験に関わるドクターやスタディ・コーディネーターらが集まり、治験の参加基準や、プロトコール(手順)の詳細をレビューしたり、副作用報告の手順の確認などを行います。治験のなかで何か手技を伴う場合(例:007治験の場合は肺機能検査)は、その手技のデモンストレーション、練習を行ったりもします。現在進行中の007治験も、途中で何度かプロトコールの改訂や責任者の交代がありましたし、新しく参加してくれた病院も結構いるので、改めて治験に関わる人達、皆が集まって話し合う事はとても大事な事でした。

会議は朝早くから夕方までの丸1日のスケジュールで行われました。出来るだけ一方的に説明するレクチャー形式を少なくし、出席した人たち全員が発言し自由に議論し合うオープンセッションを多く取ったので、とてもプロダクティブな会議になりました。オープンセッションは予定時間をオーバーし、現場のERドクターの直の意見を沢山頂いて、今後のスタディにも有益な情報も沢山頂きました!「Kazuko,この種のインベスティゲーターミーティングには今まで何度も出た事があるけれど、今回ほど有意義でなおかつ楽しかったミーティングは初めてだよ!」と、出席したドクター達に異口同音に言って頂けたのはこのスポンサー冥利に尽きるものでした。自画自賛になるのかもしれませんが、混沌としインテンシブな救急部現場でこの治験を遂行しているドクターのMN-221への熱意や高い興味を肌で感じられた、本当に素晴らしい会合でした。

この会議中にコーディネーターの1人から発言があった患者さんの話です。007に参加した或る患者さんは、いわゆる“frequent  flyer”  (ERを頻回に受診する患者さんの事を”航空会社のお得意様“という表現を借りてでこう呼ぶのです) らしいのですが、007治験に参加した時は症状が改善し、入院することなく救急部から帰宅出来たのだそうです。ところがその後、また喘息発作でERを受診したのですが、1度007治験に参加しているのでもう参加する事は出来ません。それで、今回は普通に標準治療をERで受けたのですが、症状が改善しなかったので、ICU(集中治療室)に入院になったそうです。それで、家族と本人が後になって病院に問い合わせてきて007治験に参加した時、自分にはプラセボが投与されたのか、それとも治験薬(MN-221)が投与されたのか是非教えてほしいと問い合わせてきたのだそうです。でも007治験は二重盲検試験ですから、誰がプラセボまたは治験薬が投与されたかはドクターも解らないようになっています。(もちろん私達も)

4月には決算報告会やパートナー会社とのミーティングがあり日本出張もありました。4月1日の決算説明会に合わせてパートナー会社との打ち合わせやアナリスト、コンサルタントの方との会合をスケジュールして頂けたので、一度の出張でとても効率的にいくつものミーティングをこなす事が出来ました。

4月上旬には今度はDSMB=Drug  Safety Monitor Boardのメンバーの方々に集まって頂いてのMN-221の安全性を確認する会合がありました。007治験は以前は、エンロールメント(患者登録)が遅々として、データがあまり集まらなかったのですが、昨夏の007チームの入れ替え、プロトコール改訂後は今までとは飛躍的にエンロールメントが改善しました。そのため、集められたデータもかなり多くなりました。スポンサーである私達はblinded data (盲検されたままのデータ)しかレビュー出来ないのですが、DSMBメンバーはクローズド セッションでun-blinded data(治験薬投与群と、プラセボ群を分けたデータ)をレビューして頂きました。結果、治験薬(MN-221)には安全性には全く問題がない、現在のプロトコールで治験を進めていくことに全く問題が無い、というお墨付きをもらいました。このDSMBミーティングは治験続行中に何度も繰り返し行われるもので、治験薬、もしくは治験プロトコールに安全性の点から何ら問題が無いことを第三者にバリデーションしてもらう重要なプロセスです。ですから、今回データがかなり蓄積されて行われたDSMBによる安全性データレビューにて安全性に問題が無かった事、今後の治験に“Go”サインが出た事は大変重要な指標になります。

日本出張からアメリカに戻って来た日、ロサンゼルスで日本TVを観ていたら被災地での入学式?卒業式?の様子が映し出されました。学ランを来た中学生位の男の子が歯を食いしばって涙を流しながら、“家族を失い、友を失い、こんな辛い状況でも(中略)こんな苦境でも天を恨まず、前向きに生きていこう、、”と、いうような趣旨を宣言していたのです。息子ほどの(もし私にいたら)この男の子の「こんな苦境でも天を恨まず、、」という言葉にハッとさせられました。これほどの辛い状況に置かれているにも関わらず子供達が前向きに生きようとする姿には、なんと強いエネルギーがあるでしょう。被災地の方々の生活が日々少しずつでも安全で快適になっていること事を願います。

松田 和子