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薬物依存の治験について

2010/10/12

皆さん、ブログの更新に少し間が開いてしまって御免なさい。

ジャケットやセーターが必要なほど冷え込んだかと思えば、灼熱の真夏のような気候に戻ったり、、、と落ち着かない天候の変化のせいか、体調を崩していました。普段は至って健康、医者知らずの私ですが、過去2年ほど、軽いウイルス性上気道炎(いわゆる普通の風邪のことです)に罹ると、その後引き続いて「咳喘息」の症状が現れ吸入薬のお世話になるようになりました。寝不足が続き、少し疲れていた所に出張が続いて、飛行機の中で風邪のウイルスをもらってしまったようです。風邪そのものは軽く済んだのですが、その後、咳と喘鳴が止まらないので吸入薬をひっきりなしに使用しています。これ以上ひどくなって救急病院に行くほど悪化したなら、間違いなくMN-221の治験を行っているUCLAかUCSDの救急病院へ向かいます。でも自分がMN-221のお世話になるかもしれないとは5年前にMN-221に関わり始めた時には考えてもいませんでした。

今回は薬物依存の治験について少しお話しようと思います。現在進行形で行われている治験はニューヨークのコロンビア大学で行われているヘロイン中毒患者さんを対象にした治験です。また、前回のプレスリリースでも発表された通り、UCLAで覚せい剤中毒の患者さんをターゲットに治験が始まります。

さて、コロンビア大学の治験はヘロイン中毒の患者さんを対象にしているのですが、中毒を克服したい、この病気を直したいという意思がある人はこの治験に参加出来ません。何故なら、薬物中毒を直したい!という意思を表明した場合は即座にリハビリ施設など、適切な場所で適切な治療を受けさせることが人道的、倫理的だからです。我々の治験に参加してもらうためには、薬物中毒者であるが、現時点では治療する意思はない、けれど、将来的に治療することにつながる治験には興味があり理解があるという、“微妙な”ポジションの患者さんを対象にしているのです。

治験に参加する場合、患者さん個々人の中毒のレベルによってデータに差がでては困るので、最初の1週間は、一定量のモルヒネ(ヘロインと同じ仲間の麻薬の一種、鎮痛効果があるため医療現場で使われています)を投与されるのです。口の悪い人に言わせると、色々な制約がって大変な部分もあるかもしれないけど、最初の1週間はただで正々堂々とモルヒネ(麻薬の一種)を投与してもらえる、麻薬中毒者にとっては夢のような(?)治験ということになります。

この治験、我々は治験薬を提供するだけで、かかる費用も治験自体もNIH(国立健康衛生局)が主導している治験です。国家の科学研究費を使って薬物依存という病気の治験が行われるということも驚きですし、さらにそのスタディプロトコールで最初の1週間に麻薬であるモルヒネを投与するというのも何だか驚きです。日本人のカルチャーからすると、すごく違和感がありませんか。

私はアメリカで公衆衛生の大学院を卒業した後、カリフォルニアで貧困者をターゲットに無料でヘルスケアを提供するNPOで働いていた事があります。その時のプロジェクトの1つがHIV感染者、AIDS患者を減らすために、麻薬中毒者に無料で注射用のシリンジや注射針を配布したり、中毒者の間で使い回しする注射針の正しい消毒の仕方(?)を教育(?)するというものでした。「えーっ、それは、、、、ちょっと違うのでは?!?!」と驚いたものです。でも同時に‘AIDS患者を減らす、HIV感染者を減らす‘という目的のために手段を択ばないアメリカのスケールの大きさというか大胆さに感心したものでした。

「麻薬患者はどんなに言って聞かせても、今日、明日には麻薬を辞めない。でも清潔な注射針や正しい消毒法を教えれば、今日、明日のAIDS、HIV感染という2次病害は防げる」というのがその理念だったのです。麻薬中毒は、本人の意思や家族の協力だけではなかなか克服できない根が深い疾患です。お薬の助けで、麻薬中毒の地獄から抜け出せるのでしたら、それは大きな朗報だと思います。コロンビア大学での治験は当初の予定よりちょっと遅れましたが、もうすぐ完遂予定です。

それから、東京事務所にお問い合わせがたくさんあった、NBCのTV番組のことです。9月に放映されなかったので日本の株主の皆さんに、私はオオカミ少年!と言われているのでは、、とめげていました。が、とうとう、今日の夕方、チームの皆で編集されたビデオを視聴し最終のOKを出しました。色々あって(この言い訳は実際に放映されてからすることにしましょう、、)延び延びになっていましたが、FDAの弁護士も視聴してOK、我々からもOKが出たの、あとは放映を待つだけです。本当良かったです。とても良い編集で、出来るだけ早くHPにも掲載されるようにします。

松田和子