チンパンジーのBonnie
チンパンジーのBonnie
今日はアメリカ合衆国の誕生日、つまり独立記念日。夜半からいたるところで大輪の花火が打ち上げられてお祭りムード一杯。花火に先立ち、ディスカバリーの打ち上げとは独立記念日にもってこいのお膳立て。いかにもアメリカらしい。ただ、北朝鮮がデポドンで祝福してくれたのはいらぬお世話、迷惑千万。
ディスカバリーで思い起こすのが、チンパンジーのBinnie。
その昔、1961年11月29日、アメリカはチンパンジーを人工衛星に乗せ、地球を2周させた後に回収するという画期的な出来事がありました。何せ、打ち上げた衛星を回収したのですから画期的なのです。当時、宇宙開発の向こうを張っていたソビエトは、ライカ犬を乗せて片道で宇宙へ送り出したのですから、その違いは自明です。
このとき頑張ったのが、チンパンジーのBonnie.なのです。詳しい理屈はわかりませんが、衛星が地球に戻るためには、別なエンジンを起動して地球に降りる軌道に乗せなければならないとのこと。しかも、絶妙のタイミングで。この地球に戻るエンジンを作動させるスイッチを押したのがBinnieでした。
どうやってスイッチを押すことができたのでしょうか。Bonnieは2年間も特訓されていたのです。それは実験室から始まりました。特定の大きさで特定の色のランプがついたときにボタンを押すと褒美にバナナチップが出るように仕掛けられた機械から始まりました。人工衛星にはいくつものランプがありますから、ランプであればなんでもボタンを押してはいいというものではありません。また、不必要なときにボタンを押されては宇宙のかなたに飛んでいきかねません。必要なときに必要なボタン、つまり特定の大きさで特定の色のランプをランプが点灯した時にだけ押してもらわなければならないのです。簡単そうですが間違いが許されない仕事です。トレーニングには2年を要したとのことです。
6匹のチンパンジーが一緒にトレーニングを受けたそうですが、遊んでいても、寝室でもランプが点灯するとすぐにボタンを押すようになったのがBinnieだったとのこと。この仕事を担当したのは、宇宙工学の専門家、UCLAのTillson教授。宇宙工学の専門家がチンパンジーのトレーニングに付きっ切りだったというちょっといい話。
今日のディスカバリーの打ち上げをテレビで見ながらBonnieを思いだしました。
ちなみに、Tillson博士は92歳でまだご健在、ロス在住です。
2006年独立記念日に
岩城裕一